デレクターズレポート 防災航空隊

『埼玉県防災航空隊』
http://archive.pref.saitama.lg.jp/soshiki/e05/

昨日、岩手からの帰り道、埼玉県防災航空隊にお邪魔してきました。

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 埼玉県防災航空隊は日本で最初の防災航空隊です。

それまでは予算のある自治体、東京都、横浜市、川崎市、名古屋市、福岡市などの僅かな場所でのみで消防航空隊が存在していました。

ではそれ以外の都道府県ではどうしていたのか?

災害発生時は、主に警察や自衛隊に対しての災害派遣を行っていました。

でも災害が多発し、その種類も多岐に渡るのが現実で、警察や自衛隊でも即時の対応が出来なくなる事が予想されました。

そこで当時の自治省消防庁が推奨し、防災航空隊のシステムが出来上がりました。

防災航空隊とは

・機体(ヘリコプター)は、地方自治体(県)が購入する

・救助作業にあたる隊員は、県内の各消防本部から選抜された隊員が、2年または3年の任期で従事する

・操縦士、整備士は、地元にある民間航空機使用事業会社から、県に出向する

・ヘリポート、整備設備、格納庫などは地元にある民間航空機使用事業会社の設備を使用する

こうして日本で最初の防災航空隊が埼玉県に発足しました。

幸いな事に、私はこの立ち上げから約5年間、副操縦士兼運航管理者として従事する機会が与えられました。

ここから山梨県防災航空隊の副操縦士兼運航管理者として、合計約10年の防災航空隊勤務を経験させていただく事になります。

しかし埼玉県防災航空隊発足は簡単なものではありませんでした。
「行政の縦割り」という壁と戦わなければならなかったのです。

防災航空隊を提唱したのは自治省消防庁。
ですが航空機の飛行を管理するのは運輸省航空局(現在の国土交通相航空局)。

この両社間に連絡や打ち合わせが全くなく、航空法というものに打ちのめされました。

操縦士が民間のパイロットであるという事で、救難救助業務を通常業務として認めてもらえず、結果週に2回は航空局にクレームを持ち込んでいました。

しかし正式な承認は得られず、結果毎回の出動に対し、

・低空飛行申請(現場でホバリングを行う為、航空法で定められた最低安全飛行高度以下での作業をする為)

・物件投下申請(隊員が救助の為に、ヘリコプターからロープやワイヤーを用いて現場に降下する為。また要救助者をワイヤーで釣り上げる為。また山火事などでは、空中から水を散布する為)

・臨時場外離着陸場申請(収容した要救助者を、救急車や医療機関に引き継ぐ際に着陸する為)

などの書類を、事後申請という形で出していました。

しかしそれも約半年で、法律上ではなく担当者レベルで認めるという事で、事後申請は必要がなくなりました。

現在、全国46都道府県(千葉県は除く)に防災航空隊が配備されています。

その活躍は多岐にわたり、全国での相互応援協定も結んでいることから、活動は担当する都道府県に限らず、全国規模で活動を行っています。

東日本大震災。先日の茨城県での水害でも多くの防災ヘリが救助や救急搬送。緊急物資輸送などを行いました。

先日の茨城県での水害では、自衛隊ヘリの活動が生中継で放送されていましたが、埼玉県防災航空隊も堤防の決壊直後、報道機関取材ヘリからの無線連絡により、いち早く現場に急行し、自衛隊が救助を行った同じ地域で、報道ヘリが取材をする前に既にたくさんの要救助者を救助していました。

昨日訪れた際にも、途中で水難救助の要請が入り飛び立って行きました。

今でも埼玉県、山梨県防災航空隊に従事していた事を誇りに思っています。               防災航空隊OB CDAGJデレクター